仮説と検証を繰り返しJR船橋駅から広がる新しい事業「EKIPICK MART」
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仮説と検証を繰り返しJR船橋駅から広がる新しい事業「EKIPICK MART」

SAMURAI INCUBATE 公式note

サムライインキュベートは、2019年より、ジェイアール東日本都市開発の創業30周年の記念プロジェクトの一環として、社員発案で創る次の30年と称し、新規事業提案社内コンペ「燈台」の取り組みを支援しています。

「EKIPICK MART」は、お弁当(専用)冷蔵ロッカービジネスの展開を起案して、初年度開催の「燈台」で2019年10月に事業プランニング・初期検証へ進む事業案として採択。同年12月に「燈台」最終プレゼン審査会にて事業化挑戦権を獲得し、今年3月に事業化が決定しました。JR総武線船橋駅直結のショッピングセンター「シャポー船橋」では、すでに駅の無人販売サービス「EKIPICK MART」がスタートしています。

今回は新規事業「EKIPICK MART」の責任者である山田 慎太郎さんに、これまでの経験を通して、社内新規事業を成功させるためのポイントや、今後の抱負についてお伺いしました。

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株式会社ジェイアール東日本都市開発 ショッピングセンター事業本部 マーケティング開発部 山田 慎太郎

2010年入社、当初はJR東日本グループの駅ビル会社のアトレに出向して新規開発やリニューアルについて経験を積み、以降10年以上、駅ビルの開発に携わっている。携わった代表的な開発は、船橋駅のエキナカと10階建て駅ビルの新規開発、高架下の駅ビル「シャポー船橋」の全館リニューアルなどである。開発コンセプトから店舗の誘致や区画割・環境デザインの検討など、業務は多岐に渡る。、その船橋駅で無人販売サービス「EKIPICK MART」の検討がスタートしている。



無人販売サービス「EKIPICK MART」は駅ビルが長年解決できずにいた課題を解決していく

——— まずは、「EKIPICK MART」の事業概要について教えてください

「EKIPICK MART」は、駅の無人販売サービスです。駅ビルの営業時間外でも、店舗が人手をかけずに商品を販売でき、同時にお客さまが商品を受け取りたいというニーズも満たすことがコンセプトになっています。駅で商品をピックアップできること、販売のイメージの沸く名前として、この名称になりました。

——— お客様のニーズは具体的にどのようなものなのでしょうか?

凡そ、駅ビルの営業時間は10時開店、21時閉店と決まっています。一方で、駅の時間帯別の乗降客数を分析すると、朝も夜も駅ビルの”営業時間外”に人の流れが多いのです。ここにチャンスロスが発生しているのではないかと最初に仮説を立てました。

また、お客さまアンケートによると、「美味しいから駅ビルのお弁当・惣菜を買う」という人が63%いて、営業時間外でもお弁当・惣菜を買いたい人が65%もいました。しかし、現状は仕事帰りにお弁当・惣菜を駅ビルで買いたいと思っても、駅ビルの閉店間際には商品が売り切れていたり、駅ビルが閉店してしまっていて、買いたいのに買えていない人がたくさんいます。つまり営業時間外の無人販売サービスを始めることで、多くのお客さまのニーズを満たすことができるわけです。

——— テナントのニーズにはどのようなものがあるのでしょうか?

駅ビルの営業時間に縛られず商品を販売できるチャンスがあれば、廃棄ロスの削減に貢献できるのでは、と考えました。駅ビルは営業時間を定めているため、食物販の店舗は、その営業時間内に賞味期限のある商品は売り切らないと廃棄ロスとなってしまいます。

廃棄ロスを気にするあまり、閉店時間が近づくにつれて新たに商品を作らなかったり、早く値引き販売することで、閉店の1時間前にはお弁当や惣菜が売場になくスッカラカンという状態なのは、よくある光景です。つまり、実際には閉店の1時間前くらいから、多くのお客さまはお弁当や惣菜を買いたいのに買えないという状況になっており、店舗にもお客さまにもジレンマが発生しています。

この問題を解決したいとこれまで考えていましたが、なかなか解決策が見つけられずにいました。そこで「EKIPICK MART」では、メインターゲットを夕方以降の帰宅時に駅を利用する人に設定し、営業時間外でも無人販売できるサービスが提供でいれば、店舗が長く抱えていた問題も、お客さまのニーズも満たすことができると考えました。

——— 競合はどこになるのでしょうか?

直接の競合は今のところないと考えています。無人販売の中でも、無人コンビニのような”店舗型”ではなく、商品棚+セルフレジの”什器型”で展開を考えていて、現状、”什器型”でサービスを提供する会社は、オフィス内やマンション内などの限られた利用者の環境での販売に留まっています。その点、「EKIPICK MART」は、一般の利用者をターゲットに、設置した場所を訪れる全ての方がお客さまになり得ます。そこに加えて、駅ビルの専門店の商品が営業時間外でも買えるという付加価値を付けたサービスです。

仮説→検証から新しいアイディアが生まれる

——— 燈台のビジネスコンテストの応募段階のアイディアからは変化しているようですね

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(写真)当時、検証を進めた「EKIPICK LOCKER」

そうですね。スタートは「EKIPICK LOCKER」でした。事前にアプリで注文した商品を、帰宅時にロッカーで受け取れるというサービスです。これがEKIPICKのコンセプトを体現するサービスの最初の形です。
しかし、アプリで事前に注文するよりその場で買えた方がより便利じゃないかとも思い、無人販売サービス「EKIPICK MART」の検証も同時に進めました。この2つの事業を進めていくと、「EKIPICK LOCKER」については単独で事業性を確保することは難しいことが判明し、より成長が見込める「EKIPICK MART」に注力して進めることに決めました。

ここでも販売方法として、セルフレジで商品を販売する方法と専用アプリでスマートショートケースから販売する方法の2つを検討しました。検証の結果、専用アプリを使うサービスは、利用者の幅を狭めてしまうこと、また、決済手段としてSuicaを使うことが難しいことが分かったので、セルフレジの販売で進めていくことに決めました。

——— 検証した後にすぐに方針転換できる意思決定の早さは、すごいですね

実証実験の開始時に、仮説として上手くいかない事柄の想定もしていて、検証はその確認作業でもあるわけです。もちろん、上手くいくに越したことはないですが、少しの可能性でも検証してみて、上手くいかないことは今後検討しないという方向性を出して次の検討に活かしていく、という方針で進めています。

例えば、専用アプリで購入するスマートショーケース形式については、アプリをダウンロードする必要があるという点で、利用者の客層の幅を狭めてしまい、あまり上手くいかないだろうという仮説を立てていました。一方でセルフレジのみで検討を進めるにあたっては、上記の結果を踏まえたうえで、今後は専用アプリを使用しないで販売する方法で検討を進めていこうという方針を出して進めたいという想いがありました。

「EKIPICK LOCKER」では、利用にはPayPayアプリが必要で決済はPayPayのみだけでは厳しいだろうなと思ってやってみたら、想像以上にサービス利用者のPayPayアプリのユーザが少なく、対象を狭めてしまうことになりました。仮説を立てて検証を進めるのは、上手くいく方法を探すためでもあるので、常に各検証のよかった点と悪かった点を振り返りながら次の検証に繋げています。各検証でうまくいかなかったことはきちんと次のステップの糧となっているので、事業の失敗ではないことから、結果がどうあってもその検証をどう活かせるのかをという方針をぶれずに進めることが大切です。

——— 実際のお客さまの反響はいかがですか?

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お客さまから一番大きい声は、「これまで買えなかった時間帯に商品を買えてうれしい」ということです。その結果として、営業時間外の売上は50%近くまでとなっており、EKIPICK MARTの狙いと合致しています。仮説と検証を繰り返してきていて、仮説にとらわれず、結果を踏まえて次のステップへ進むという形が順調に作れてきているという手応えがあります。

——— 社内では審査通過するための障害のようなものはなかったのでしょうか?

燈台審査通過の一番の障害はマネタイズの面だった思います。私たちは審査段階で営業時間外に販売して、本当にニーズがあるのか実際に自分たちで手売りして検証しました。寿司屋にお願いして21時から販売し、そこでしっかり実績が出たことで、お客様のアンケートから得られたニーズのデータに加えて、より確かな証明になりました。プレゼンの際にはそういった実際に買う人たちの姿も動画で見せられたのでインパクトが強かったです。障害になるだろうという部分を自らで検証ができたため、より大きな壁にならず、審査通過できました。 

イントレプレナーだからこそのアセット活用と経験

——— 燈台事務局のサポートの効果にはどのようなものがありましたか?

今は二人で新規事業を進めていますが、燈台事務局からのメンターとしてサムライインキュベート芳野さんには適時報告と事業戦略についての相談をさせていただいています。新しい事業を創るという点では初めてなので、進め方やチェックポイント、私たちが気付けない視点でのアドバイスをもらえるのは有り難いですね。

事業検討段階では、燈台事務局の管理下で細かい事務作業を全部お願いすることができたので、自分のやるべきことに注力できて助かりました。今年から新規事業として認められたのは嬉しい反面、社内の事務手続きなどを全部二人でやらなければならなくなって、大変になりましたね。

——— 大手企業内での事業立ち上げだからこその利点もあったと思いますが、その点についてはいかがでしたか?

そうですね。私の場合は3つあります。

一つ目は、JRのアセットの中のマーケティングデータを活用できたことです。リサーチ会社など外部に委託する必要はなく、自社内で保有するデータを活用するだけでも精度は高いです。駅ビルの新規開発やリニューアルで、もともとそういった情報を活用していたので、外部に委託しなくても自らで分析する知見はありました。私自身、駅ビルの新規開発やリニューアルなどで、お客さまにとってどういうお店がいいのか、どういうサービスを期待しているのかなどを常に分析してきましたので、そこで培ってきた経験値が今回の新規事業に活かされて、実現に向けて進んでいます。

二つ目は、自社が保有するLINEなどのSNS媒体でEKIPICKの情報を発信してお客さまに注目していただくことができました。これは非常に成功していて、情報発信は労力をかけずにできています。これは自社のプラットフォームの大きな影響力を有効利用できているからです。

最後に、駅ビルを所有しているという最大の強みですね。当社の駅ビルの特徴として、お客さまが生活導線のひとつとして駅ビル内を通行する点もマネタイズの面の期待を高めてくれています。さらに、駅ビルの営業時間外でも駅ビル内を通行できるので、EKIPICK MARTは必ずしも最も通行の多い出入口に設置する必要はなく、むしろその生活導線上に置くことで買っていこうというお客さまも必ず現れます。施設の特徴を上手く活かせている事業だと感じています。社内でも同じように感じてくれているからこそ、実証実験やテストマーケの初動の早さについても、やはり大手企業内だからこそのアドバンテージですね。

——— 問題点を解決するために外部に依頼することはありますか?

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今後はセルフレジ販売に注力して進めていきますが、パナソニックさんと販売する什器について、EKIPICK専用の什器を開発しています。現状の什器ですと、2つの課題があります。

1つ目としては、開放的でオープンな什器で販売しているので、「誰でも商品を触れられるのは不安」、「什器内の埃や虫が気になる」といった商品の衛生面を心配するお客さまの声が聞かれることです。

2つ目としては、販売時間の管理で、現在は5:30~24:00とできる限り長い時間販売しており、賞味期限の長いパンのみを販売するのであれば問題ありませんが、お弁当や惣菜など、賞味期限が短い商品だと現状では対応が困難です。そこで、ショーケースに施錠付きの扉を設置して、Suicaでタッチすると解錠してショーケース内の商品を取り出してセルフレジで購入ができるEKIPICK専用の什器を開発しています。これだと上記の衛生面の課題をクリアでき、販売時間もタイマーを設定して管理できます。設定時間以外は鍵が閉まって買えない仕組みなので、賞味期限の短い商品を扱うことができるんです。今後はこの什器をシャポー船橋に12月から3ヶ所で4台を増設し、パン以外の商品を販売する予定です。

「EKIPICK MART」がこの先、期待されること

——— 順調に新規事業が進んでいますが、今後エリア拡大の予定はありますか?

現状として「EKIPICK MART」はシャポー船橋だけで取り組んでいます。船橋駅を選んだ理由は、当社が運営する駅ビルで利用者が一番多いのが船橋駅だからです。人が多いところで上手くいかないと人が少ないところでは上手くいかないわけですから、まずシャポー船橋で実績を示していきたいと考えています。エリア拡大するとしたら、隣接する市川駅などにもシャポーがありますので、そちらになりますね。

あとはEKIPICK専用の什器の生産に時間がかかりそうなので、実績と什器の生産が揃えば一気に広げていく可能性もあります。これからも変わらず、仮説と実証の繰り返しで事業を育てていこうと思います。

——— サムライインキュベートとしてもご支援していきますので、引き続き、宜しくお願い致します。

サムライインキュベートでは、日本のイノベーションをスタートアップと共に切り拓いてきた実績をもとに、大手企業や自治体・行政が主導するイノベーション支援事業を提供しています。単なるコンサルティングやアドバイスに止まらず、ビジョンを共有し変革に向けて共に挑戦と試行錯誤して、成果が出るまで伴走します。興味のある方はこちらへお問い合わせください。

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