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データ活用を通して見える新しい世界。ダイキン工業と前田建設の新たな挑戦とは

※この記事はSamurai Incubateが管理するMediumで配信したものをバックナンバーとして転載しております

【2020年1月10日開催 イベントレポート】
近年、企業によるデータ活用の動きが増えてきました。いま、データ活用は産業構造や個人の生活に大きな変革をもたらそうとしています。
今回のイベントでは、空間データの活用を行うダイキン工業とバイタルデータの活用を行う前田建設がパネラーとなり、センシング・分析したデータの活用やオープンイノベーションの可能性についてディスカッションを行いました。

・データをセンシング/分析する技術を保有するスタートアップ企業や研究機関
・データ活用を行っている企業
・オープンイノベーションに興味がある企業

このようなデータ活用に取り組む企業や研究機関の方はぜひご覧ください。

登壇者紹介

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安井 俊介
ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 戦略室/CVC室
2016年京都大学経営管理大学院卒業、ダイキン工業入社。入社後は東京大学、大阪大学との産学包括連携の立ち上げや、東京大学のFoundXにて社内アイデアプロジェクトの企画を行う。
現在、スタートアップと社内事業部との協業企画の他、19年11月に新設されたCVC室にて投資案件を担当する。

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小原 孝之
前田建設工業 ICI総合センター イノベーションセンター長
前田建設入社後、技術研究所にて研究開発に従事。中国清華大学との提携を機に、同大に留学して博士号を取得。その後も3年間、中国事業に携わる。
2011年に日本帰国後、5年間、新規事業開発に携わり、2016年より技術研究所に再配属、2018年より現職に。

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平田 拓己
株式会社サムライインキュベート Team Leader Investment Group
高校時代から株式投資をスタートし、大学在学中に200社以上の上場企業決算をまとめるサイトを立ち上げ運営する。VCに興味を持ち、2017年サムライインキュベートにインターンでジョインし、リサーチや起業家面談、大企業の新規事業開発コンサルを経験。甲南大学経営学部を卒業後、入社。6号Fundのファンドレイズを経験し、新規投資をメインに従事する。


ダイキン・前田建設でのデータ活用と協業事例

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安井)ダイキンという名前をご存知の方も多いと思いますが、弊社は売り上げの9割がエアコンで、特に業務用エアコンや海外事業も大きな売り上げになってます。ベンチャーとの協業は1年ほど前から取り組んでいます。

ベンチャー企業との協業例
フェアリーデバイセズ株式会社
スマートウェアラブルデバイス『THINKLET™(シンクレット)』を用いて、現場作業員の作業情報のデータ活用を行う。(「東大発ベンチャーのフェアリーデバイセズとダイキン工業 コネクテッドワーカー創出による現場業務の革新を実現」)

株式会社ABEJA
製品の故障の情報から最適な部品を提示するなど、AIを活用した業務改善・効率化を行う。

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小原)建設業界はこれから業績が下がっていく見込みの中、前田建設の経営方針として「既存の請負業から、新しいサービスを融合させた総合インフラサービス企業に変革する」ということを打ち出しました。
今まで培った建設のノウハウを活かして、上流工程から下流工程、まさにゆりかごから墓場までのサービスに携わっていきたいと考えています。

ベンチャー企業との協業例
株式会社アイデアクラウド
スマートグラスを用いて遠隔で工事現場の施工管理・測量が可能。

ミツフジ株式会社
ウェアラブルシャツで作業員の生体情報をとることで熱中症の危険度の検知を行う。

AllegroSmart株式会社
データの同期やクレンジングを自動で行え、ITリテラシーの低いユーザーも使いやすいサービス。

製造業・建設業が”今”データ活用に力を入れる理由とは

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平田/MC)製造・建設の大企業がなぜ今、データ活用に取り組むのでしょうか?

安井)「ユーザーへの価値提供」「社内の効率化や業務改善での活用」のためです。空調機の基本的な構造はこの数十年間で大きくは変わっていません。そういったハード製品でビジネスを加速するためには、ハード面の技術だけでなくソフト部分のデータ活用でユーザーに価値提供をする必要があります。また、いまだアナログな工場現場をデータを使って生産性を上げようと考えています。

小原)建設業界は作業員のノウハウに頼ってきたことでデータ活用ができていません。そんな業界でいま、私たちは全く違うイノベーションを起こそうと考えています。例えば建設業界での熱中症の課題と、ミツフジさんのビジョンが一致し、バイタルデータを活用して作業員の熱中症を予防する事業を進めています。
イノベーションの基礎にデータ収集・活用をして、その上でAIやITを用いるのです。建設業界は課題が多いからこそ、データを活用して何段階も上の破壊的なイノベーションができるので、ぜひスタートアップのみなさんのお力を貸していただき一緒に頑張りたいです。

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平田/MC)前田建設さんがバイタルデータに挑戦した理由はなんでしょうか?

小原)今回トライしているウェアラブルの技術は「作業員を守れる」という発想から生まれてイノベーションが起きています。
実は3Dモデルやロボットでの施工など、何度もデータ活用にトライして失敗しています。優れた技術でも現場のITリテラシーが低く、技術を活かしきれていないのです。だからデータ活用で課題になっている”人”を飛び越えた技術やアイデアでイノベーションを起こしていきたいと考えています。

大企業とスタートアップの協業で求められること

平田/MC)大企業がオープンイノベーションで取り組みたいことはなんですか?

小原)私たちが取り組む理由は、生産性向上などのプロセスイノベーションとスタートアップの持つ破壊的イノベーションを起こす技術やアイデア・意欲への期待です。私たちはいわゆる大企業病にかかってるので(笑)大企業の思考に染まった私たちにできないことを、スタートアップさんの力を借りながら進めていきたいです。

私たちが取り組む理由は、生産性向上などのプロセスイノベーションとスタートアップの持つ破壊的イノベーションを起こす技術やアイデア・意欲への期待です。私たちはいわゆる大企業病にかかってるので(笑)大企業の思考に染まった私たちにできないことを、スタートアップさんの力を借りながら進めていきたいです。例えば、ベテラン作業員の形式化されてないノウハウをデータに落とし込んで、AIや形式化をする。若手がそのノウハウを身につけて成長して建設業を効率化したいと考えています。

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安井)ダイキンでは先進的な技術よりも自社とシナジーのある企業さんと新しい領域に何かを一緒にトライする姿勢で取り組んでいます。先進的な技術も重要ですが、ダイキンとシナジーがあるのは必ずしも先進領域に限りません。先月弊社の会長をNewsPicksさんに取り上げて頂きましたが、「何かしないといけない」という思いは全社的に大きくなっています。ダイキンのオープンイノベーションはトップダウンで始まり、実際に動き始めたプロジェクトは若手が動いて活性化をしています。(「【独白1万字】ドンが語る。ダイキン、「無敵経営」のすべて」

平田/MC)スタートアップと組む際に大企業が求めることや期待はありますか?

安井)大企業では小回りが利かない性質上、IoTやAIディバイスなど世の中にすでにある技術を全て自社でまかなうのが難しいです。そこで「こんなのがあったらいいな」という製品・技術を持つスタートアップと現在の事業から一歩外に出た面白いことを一緒にトライしていきたいと考えています。

小原)人の技術が形式化できていない建設業界では、データを扱う作業員がネックになっています。そんな中でスタートアップに求めるのは、今の状況を少し良くするのではなく、全く違う破壊的イノベーションを起こすことです。建設に関係ない分野など想像もできないことを実現しようとしているスタートアップさんと協業できたら面白いですね。

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平田/MC)反対に、大企業がスタートアップ企業に提供できることはなんでしょうか?

安井)出資はもちろんブランドネーム、海外への展開など、ダイキンの持つアセットを活用できます。例えば、ハードに関わるスタートアップには、ものづくりに重要な生産や安全などを支援できます。

小原)建設業は甲乙の関係ーー元請けと下請けの関係が強いですが、前田建設はスタートアップを対等なパートナーとしてリスペクトして、一緒に新しいものを作っていきたいです。だからConTechに参入したいスタートアップさんに、甲乙関係なく光る場所を提供します。
また、前田建設は街づくりなどの公共性が高く、課題の多い分野に取り組んでいきたいので、この分野に対して高い志あるスタートアップがあれば一緒にトライしましょう!

大企業とスタートアップが二人三脚で新しい事業を進めるためには

平田/MC)ありがとうございました。ここからは会場のみなさんの質問に答えていきたいと思います。

[質問]投資はどのようなプロセスで行うのでしょうか?

安井)シードに対してはサムライさんと一緒に出資などの検討をさせていただいています。アーリーミドルくらいのステージにはダイキンから1億から5億ほどの直接出資の可能性もあります。

小原)前田建設は「前田ソーシャルインパクトインベストメント(前田SII)」という制度を行っています。協業シナジーを目的に行うので、同じ船に乗って向かう意味で株を購入させていただき、1億円を上限として起業前も含めあらゆるフェーズを支援しています。

平田)サムライではブートキャンプを経由して協業を視野に入れながら投資をしていきます。2月にはダイキンさんと共同で行う『AirTech BootCamp』を開催します。(※2月5日・6日に、第2回AirTech BootCamp開催しました)

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平田/MC)次の質問です。

[質問]大企業とベンチャーのスピードの差がある中で、ベンチャーが先に資金切れしないのでしょうか?

安井)実際に”資金切れ”をしそうになった事例がありましたが、ダイキンの事業に関わるアイデアをいただいたりと創業者が優秀な方だったため、創業者個人と一緒にやっていきたいという思いから、それこそ短期の契約社員になっていただく、といったことも含め苦しい状態でもどうしたら一緒にやり続けられるかできることを一緒に考えました。基本的に、苦しい時などは正直に言っていただけたら、一緒に最善策を考えられると思います。

小原)建設業などのハードテックはリードタイムが長く資金も必要で、ベンチャーの”息切れ”が悩ましい部分です。まさに今、あるベンチャーが死の谷で低迷している中で、一緒にスケールに向かって挑戦しています。
前田建設では開発や実験を行えるセンターのほか、宿泊・食事の取れる施設を持っています。ベンチャーの皆様にも、そこで実験を行なったり、取引先を連れてきてその成果を見せたり食事をしたりと、ぜひ私たちのアセットを自分たちのアセットのように存分に利用していただき、お互いに大きくなっていきたいという思いで協業をしています。

スタートアップ協業の軸は「新しい世界を一緒に見られるか」

平田/MC)ありがとうございます。次で最後の質問になります。

[質問]協業をする意思決定の軸はなんですか?

小原)事業シナジーが前提で、建設に限らず新しい世界が見えるかが重要ですね。社会的課題に取り組んでいて、先進性・独創性があり、夢のあるビジネスが描けることを軸として投資や協業の判断をしています。
実際の事例はミツフジさんのウェアラブルシャツの事例です。熱中症アラートを正確に判断できる技術は世界初で可能性を感じています。今後はミツフジさんが接点のなかった顧客に対し、前田建設のアセットを使ってマーケット広げていこうと考えています。

安井)協業・出資どちらの場合も協業シナジーをベースで考えています。なんとなく相手に魅力やメリットを感じてディスカッションを始め、事業シナジーが生まれる案を一緒に考えてから協業がスタートするケースがほとんどです。
例えば、アフリカの未電化地域を対象に、にソーラーパネルを用いてLDEランタンを貸し出すビジネスを行っているWASSHAさんとの協業では、はじめは明確なシナジーが描けていませんでした。なので、経営者さんと一緒に新しいアフリカならではのエアコンの売り方を考え、タンザニアでエアコンをサブスクリプションで提供する実証実験を一緒に進めています。はじめから事業シナジーがなくても、一緒に考えられる企業さんと協業したいです。

平田/MC)今回は、ダイキンと前田建設のデータ活用に取り組む2社の事例をお伺いしました。共通することは、スタートアップと大企業の二人三脚でイノベーションを起こすためにどう事業を作っていくかを、人と事業の両軸で判断することでした。大企業とスタートアップのオープンイノベーションで、新たな価値提供の創出がより多く生まれることを期待したいです。本日はありがとうございました!

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<文・写真=えるも(石橋 萌)>

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