ナイジェリアの「Pricepally」、共同購入で食品を低価格で提供
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ナイジェリアの「Pricepally」、共同購入で食品を低価格で提供

サムライインキュベートの起業家へのインタビューシリーズ、第2回は、ナイジェリアで共同購入型E-commerceプラットフォーム事業を行うPricepallyの創業者、Mr.Luther Lawoyin(通称:ルーサー)のインタビューをお届けします。
(第1回インタビュー:物流会社「Oneport365」のバックナンバーはこちらから)

【目次】
1.食品を効率的に購入できる「Pricepally」
2.起業のきっかけ
3.F&B業界で起業しようと思った理由
4.事業を行う上でのやりがい
5.起業の道のりの中で一番大変だったこと
6.起業家にとって大切なマインドセット
7.アフリカのスタートアップが求める投資家からのサポート
8.投資家へのアドバイス

1.食品を効率的に購入できる「Pricepally」

Pricepally.comは、他の購入者と食品を共同購入することで、非常に安い価格での購入が可能となる共同購入プラットフォーム(ナイジェリア版のPinduoduoを目指しています)です。
複数の顧客の需要を取り纏めることで量が確保できるため、大量のバルク購入が可能となり、各個人は小売価格よりも約30%-45%安価に食品を購入できます。食料品のインフレ率が20%超にもなるナイジェリアにおいて、必需品である食料品を安価に購入できるという素晴らしい付加価値を提供しています。

ルーサーに、起業家としての今までの歩みと、Pricepally、そして彼自身の将来についてインタビューしました。

Pricepallyサイトイメージ_n

生鮮食品を中心に、様々な食料品をウェブサイト・アプリから購入できる

2.起業のきっかけ

私がビジネスに興味を持ったきっかけは、母親です。私は幼少期いつも母と一緒にいて、母がケーキを焼いて包装し、KIOSKなどの店舗へ販売するのを手伝っていました。製造してから販売し、利益を得るまでの一連のものづくりが大好きで、ビジネスについてもっと理解したいと思うようになりました。この幼少期の経験は、私が実家を離れた後も、ずっと私の心の中に残っていました。それ以来、私はビジネスの観点から物事を見る習慣ができ、例えば、苦情を受けたり問題に直面したりしたときは、ビジネスの視点で解決策を考えるようになりました。

大学では最初、地質学を専攻しましたが、勉強を楽しめていない自分に気づき、大学2年で中退しました。当時も大学の寮でビデオゲームを貸し出す小規模なビジネスをしていましたが、それを含めて私はこれまでいつも自分でビジネスを生み出してきました。自分でビジネスをするようになってしばらく経ってから、改めてビジネスの方向性や可能性を探るために、私はビジネスを続けながら大学で経営学を勉強することにしました。経営学は、すでに過去の経験を通してある程度知識が蓄積されていた為、最適な選択でした。

私の正式な起業1社目は、学生の大学入学試験の受験勉強支援プラットフォーム「PASSJAMB」です。 2年間運営した後売却し、その後は季節行事やイベントに合わせたギフトを購入できるオンラインストア「Lucy」を起業しました。事業は着実に成長しており、短期間で1億円以上の売り上げを達成したものの、それでもなお私は常に新しい機会を探していました。そして遂に、2019年に「Pricepally」を起業しました。Pricepallyが挑戦している業界は食品産業で、非常に難しい業界ではありますが、その分、事業を通しもたらす社会的影響は非常に大きいと考え、現在も挑戦を続けています。

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3.食品業界で起業しようと思った理由

食品業界は最も挑戦的でありながら、私たちの日常生活にに密接しており、非常に重要だからです。Pricpallyの起業は私の原体験に紐づいています。

結婚後、妻が家計簿をつけていたのですが、ある日、妻は家計簿を見ながら生活費が増えていると指摘しました。明細を確認すると、食費が大幅に増加していることがわかりました。私は当時、食費が家計費の中で大部分を占めるものだと思っておらず、食費よりも医療費、教育費などに家計費を割いていると信じていました。私はこの事実に驚き、理由を調べることにしました。そして、ナイジェリアの脆弱なインフラが食費の高騰を生み出していることを突き止めました。他国では、インフラや公共交通機関が整備されているため、ナイジェリアほど物流コストが高くありません。一方、ナイジェリアはインフラが未整備である為物流コストが嵩んでしまいます。
その後、「ナイジェリアで、インフラが整った他国と同様に食費を下げるにはどうしたら良いのか?」と考えるようになり、一つの結論にたどり着きました。ナイジェリアがインフラ整備に取り組む10年、20年を待つよりも、スタートアップが合理的な手段で何かできるのではないか。それが、「Pricepally」を起業したきっかけです。

―Pricepallyはどうやって食品物流の問題を解決するのでしょうか?
Pricepallyと類似したビジネスモデルは市場に既にありますが、Pricepallyは特に消費者を起点に農家までのステイクホルダー全員を含むバリューチェーンを構築することに重きを置いています。バリューチェーンに関わる関係者は、誰もが消費者のために働いています。消費者の需要を捉えステイクホルダーをスマートに繋ぐ私たちのソリューションは、すべてのバリューチェーンに大きな影響を与えることができます。

食品物流に掛かるコストを下げるため、農家と消費者をどのように近づけるか。如何に、データを活用し消費者の需要予測を立て、農家の生産計画に反映させるか。そのようなことを考えながら、バリューチェーンの関係者全員を繋げるシステムを構築し続けました。私たちはデータを駆使して最適なバリューチェーンを構築することが可能だと思っています。私たちを信じてくれているサムライインキュベートや、その他の投資家の支援により、事業開発をを続けられています。

食品は、時に人の命にかかわる問題です。食べ物を買う金銭的余裕がないという理由で、誰かが空腹に陥る状況を作ってはいけません。農家の方は心を込めて農作物を生産・収穫していますが、どういうわけか、それが消費者に届く前に多くの価値が失われ、価格が上がり消費者が苦しんでいます。これを解決することがPricepallyの使命であり、私たちが現在行っていることです。

市場

4.事業を行う上でのやりがい

とても多くのやりがいを感じていますが、一つは若者の雇用創出です。同じ目標を持って働く仲間をどんどん採用することができていることはやりがいに直結します。仲間を増やすことで、ナイジェリアだけでなく他のアフリカ各国も抱えている食品物流の課題にも、取り組みたいと思っています。才能もやる気もあるにも関わらず、失業率の高さから仕事にありつけない若者がたくさんいます。そんな若者が活躍する場を増やすことに、やりがいを感じます。

ただ、一番エキサイティングといえるのは、食品物流の問題を解決するビジネスの進歩の過程を見られることです。起業前は、ナイジェリアの脆弱なインフラの課題は複雑で、解決する糸口が見つからないように思えましたが、課題を発見し、PricePallyの事業を通じて、問題の解決に取り組んでいる毎日はとてもやりがいを感じます。

食品物流問題の解決にあたり、主に3点に注力する必要があると考えています。1点目は「テクノロジー」です。テクノロジーをバリューチェーンに統合することにより、サプライチェーンの透明性を高め、消費者の信頼を勝ち取ることができます。
2点目は「データの活用」です。プラットフォームを通じて食品の価格のデータを収集することで、食品の将来の価格/需要を予測することが可能となります。食品価格のデータは、ナイジェリア政府も集めきれておらず、私たちが5年、10年間の長期にわたって情報を集め続ければ、多くのステイクホルダーにとって価値のあるデータになると考えています。
3点目が「パートナーシップ」です。私たちは農家、卸売業者、消費者などのパートナーと協力することで、食料供給のシンプルかつ効率的なバリューチェーンを再構築しています。

5.事業を営む道のりで一番大変だったこと

ナイジェリアで事業を運営すると、ほぼ毎日問題に直面する為、一番を選ぶのは難しいですが、あえて挙げると、制度やインフラへの対応は注意が必要です。

例えば、私が以前Lucyを運営していた際は、中国の企業(特にアリババ)と取引を行っており、中国からナイジェリアへ製品を輸入していましたが、輸入に際し、税関、警察、物流などに対処するのは頭痛の種でした。政府の手続きは、スタートアップのスピード感と全く噛み合わず、登記し銀行口座を開設し、事業を始めるまでに4ヶ月を要しました。また、Pricepallyでは、
イチゴが手に入らないラゴスへ、北ナイジェリアからイチゴを供給したいと考えていました。しかし、鉄道が通っていないため、道路を使って供給する必要があり、効率が大幅に低下しました。
私たち起業家は常に政府の不自由さややインフラの不便さにに立ち向かい、解決策を考え出し続けなければいけません。

6.起業家にとって大切なマインドセット

事業を続ける「粘り強さ」が一番の鍵です。新興市場でビジネスをするときは、不合理な状況に陥ることがよくありますが、簡単に諦めるべきではありません。ゲームを長く戦い続ければ続けるほど、問題を解決できる可能性が高くなるからです。また、自身のビジョンを失わない「一貫性」も重要です。何の課題を解決しようとしているのか、自身が起業時に抱いた想い・目標を毎日振り返って思い出し、道を外れないようにする必要があります。
粘り強さと一貫性は、起業家が持つべき重要なマインドセットであり、最終的にはそれらがチーム、組織を纏めるためのキーとなっていきます。

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7.アフリカのスタートアップが求める投資家のサポート

私が求めるサポートの一つは、説明やアドバイスです。サムライインキュベートとは、毎月、進捗状況や今後の計画について話し合う機会があります。現状を共有する機会があることで、私たちが正しい方向に進んでいることを確認することができ、大変役立っています。
ベンチャーキャピタルはそれぞれの強みを十分に理解し、それぞれに適した支援を行う必要があると思います。例えば、海外のベンチャーキャピタルであれば、世界のスタートアップのトレンドやM&Aについて幅広い知識を持っているでしょうし、逆に現地のベンチャーキャピタルの場合は、銀行/企業/政府の有力者とのネットワークが役立ちます。 1つのベンチャーキャピタルが全てをカバーできるとは思わないので、各々が各自の特徴に適した支援内容を考えて、できるサポートをして貰えると助かります。

8.投資家へのアドバイス

アフリカのスタートアップエコシステムは年々成長しており、地に足の着いた才能のある起業家が非常に多く存在しています。しかし、多くの海外のベンチャーキャピタルは、彼らに会う機会がなく、才能ある起業家を見過ごしています。ナイジェリアに足を踏み入れなければ、ナイジェリアの日々の問題を解決する為にに有効な製品・サービスを真に構築している起業家に会うことは困難だと思います。もし、現場に頻繁に足を運べば、実際に現地でビジネスをしている素晴らしい起業家と、上手く協業できるでしょう。是非、ナイジェリアに来て滞在し、より多くの起業家と会ってください。それが私のアドバイスです。


ーお忙しい中ありがとうございました!

いかがでしたか?アフリカの食品物流の課題に果敢にチャレンジするルーサーを、サムライインキュベートは引き続き全力で支援していきます!

次回は、偽物の医薬品が出回るアフリカで本物の医薬品を提供する「Medsaf」のVivian Nwakahへのインタビューをお届けします。お楽しみに!

ありがとうございます!!
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