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アグリテックの先駆者が語るイスラエル×農業の可能性

※この記事はSamurai Incubateが管理するMediumで配信したものをバックナンバーとして転載しております

【2020年2月12日開催 イベントレポート】
現代の日本の農業には、農業従事者の高齢化や人手不足など様々な問題が溢れ、いま日本は急速な農業ビジネスのアップデートが求められています。近年では、ロボティクスやドローンを活用したスマート農業が徐々に取り入れられ、様々なプレイヤーが参入し始めている日本のアグリテック領域は盛り上がりを見せています。日本の農業に対してイノベーションの鍵になりうるのが、イスラエルの先進的な技術力と独自のアイデアです。多くのスタートアップを輩出し、世界が注目するイスラエルのイノベーションやテクノロジーは日本の農業に取り入れることができるのでしょうか。

今回は、現地で多くの投資・協業支援実績のあるサムライインキュベートが、ゲストの農林中央金庫/AgVenture Labの荻野氏、アグリテックスタートアップ・株式会社レグミンの成勢氏、日本企業とイスラエル企業との協業支援を行う株式会社イスラテックの加藤氏と共に、イスラエルのアグリテックの可能性について解説していきます。

なぜ、いまイスラエル×農業なのか

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(写真)登壇者、株式会社サムライインキュベート 佐藤 亮

年間60億ドルもの投資額、資金調達の40%が海外投資家という世界から注目を浴びるイスラエル。イスラエルが世界から注目されている理由は、投資額・技術者の数・スタートアップ企業の多さにあります。
グローバル企業がR&D拠点の設立など多数進出している中、近年は日本企業もイスラエルに進出を始めています。
アグリテック以外のイスラエルの注目スタートアップやイノベーションの理由については、過去に開催した「イノベーターを数多く輩出するイスラエルの秘密とは?〜ベンチャーキャピタルが伝える、“今、日本企業がイスラエルとビジネスをする理由〜」でも解説しています。

詳しく知りたい方はこちらのイベントレポートもご覧ください。

イスラエルは少ない降水量、養分の無い土壌、日本の四国ほどの国土面積で一見農業には適していない環境です。しかしイスラエルの食料自給率は90%以上を誇り、世界有数の「農業輸出国」です。
そんなイスラエルには、革新的なテクノロジーと独自のアイデア視点を生かしたアグリテックスタートアップが多数存在しています。

イスラエルと日本のアグリテックの違いとは

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(写真)登壇者、株式会社サムライインキュベート 武田 理沙

イスラエルのアグリテックスタートアップが日本と大きく違う点は、上流工程の分野が多いことです。
日本のアグリテックスタートアップは、生産や販売、出荷などの主に下流工程が多い傾向にあります。一方イスラエルは、バイオテクノロジーや農作業の自動化、廃棄技術など上流工程に関与するスタートアップが多いことが特徴です。近年はスマートファーミング、バイオテクノロジーの分野が伸びています。特に、バイオテクノロジーでは過去5年に起業しているスタートアップが7割を占め、今後の農業業界の中でも大きく成長していく領域になることが予想されます。

独自のアイデア視点を持つイスラエルスタートアップ

イスラエルにはどのようなアグリテックスタートアップがあるのでしょうか。イスラエルの最新アグリテックについて、株式会社イスラテック代表取締役の加藤氏が解説します。

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(写真)株式会社イスラテック 代表取締役CEO 加藤 清司氏

あるスタートアップは岩から水を作る技術を発想しましたーー加藤氏はイスラエルスタートアップが革新的なテクノロジーを生み出しているのは、日本や他の国に無い発想の面白さだと語ります。
イスラエルのアグリテック企業「NETAFIM」は岩の下にできる日陰から着想し、寒暖差を利用して空気中の水分から水を作る技術を開発しました。そこから植物の根にチューブから水を少量ずつ与える、点滴灌漑という革新的な農業技術を生み出しています。
そんな独自のアイデア視点から革新的なテクノロジーを生み出しているイスラエルのアグリテックスタートアップをご紹介します。

最前線のイスラエルアグリテックスタートアップ

イスラエルは、農業生産人口は8〜9万人と全労働者あたりの農業就業率が日本と大差がないにもかかわらず、90%以上の高い食糧自給率を誇る国です。
こうした高い生産性や自給率の背景にはイスラエルがテクノロジーを積極的に駆使して農業を行っていることが起因しています。
今回はテクノロジースタートアップの中から、イスラエル企業と日本企業をつなぐ加藤氏の視点から注目しているスタートアップを紹介します。

センシング技術を応用したアグリテックスタートアップ

FruitSpec
果実収穫における推定ソリューションを提供するスタートアップ。センシング技術を応用し、収穫すべき果物を判別できます。

SeeTree
ドローンによる作物や樹木の管理技術を提供しています。どの木の状態が良いか悪いかを機械的に判別が可能です。

自動収穫系のアグリテックスタートアップ

METOMOTION
自律走行型のトマト収穫ロボットを農家に向けて提供しています。センシング技術も応用し、どのトマトが収穫どきかを自動で判別・収穫が可能です。

Tevel
自立ドローンでの自動収穫を可能にしたスタートアップ。台風や大雨など急遽収穫が必要になった場合に、人手がなくても短時間で収穫ができます。

IoTディバイスを使ったアグリテックスタートアップ

Agrint
木に直接差し込むIoTデバイスによって、病気になった樹木を判別することができます。樹木の病気になった場所がピンポイントでわかるので、傷んだ部分だけに効率よく処理ができます。

LED・太陽光など発電関連のアグリテックスタートアップ

JUGANU
太陽光の分光分布に近いLED照明を開発中。日光不足や屋内農業への応用が期待できます。

・AgroSolar
送電網に接続されてない地域で太陽光の送電が行えます。電線が通っていない農地でも、太陽光発電による自立型の灌漑システムの利用が可能です。

サプライチェーン系のアグリテックスタートアップ

・TreI’m llis
サプライチェーンに特化したプラットフォーム開発を行なっています。AIが収穫状況を予想し供給スケジュールや価格予測ができるシステムです。


農業の問題を解決するには当事者だけで考えてはいけません。他の分野からの新しい技術や視点を取り入れることで日本の農業にもイノベーションを起こす可能性があります。
イノベーティブなテクノロジーとアイデアを有するイスラエルスタートアップの事例も日本の農業にイノベーションを起こす鍵になるかもしれません

日本のアグリテックをテクノロジーでアップデートするために必要なこと

新しいテクノロジーやアイデアを日本の農業に取り入れてイノベーションを起こすことはできるのでしょうか。
最新のテクノロジーで日本のアグリテックへのイノベーションの可能性について、イスラエル現地でビジネスを行うサムライインキュベートと株式会社イスラテックの加藤氏、アグリテック事業に従事するAgVenture Labの荻野氏と株式会社レグミンの成勢氏がディスカッションをしていきます。

パネルディスカッション登壇者

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荻野 浩輝
<農林中央金庫 執行役員 デジタルイノベーション推進部長/一
般社団法人AgVenture Lab 代表理事>
1990年4月 農林中央金庫入庫。ITリスク管理、データマネジメント関連の要職を経て、デジタルイノベーション推進部新設とともに執行役員同部長就任。2019年5月設立のAgVenture Labの代表理事を務める。

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成勢 卓裕
<株式会社レグミン 代表取締役>
慶應義塾大学理工学部を卒業後、日本アイ・ビー・エムへ入社。
農業界の課題を日々耳にする中、業務で培った知見を活かして日本の農業に貢献したいと思い、2018年に農家である野毛と株式会社レグミンを創業

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加藤 清司
<株式会社イスラテック 代表取締役CEO>
イスラエルの尖った技術に着目し、2006年にイスラエル初訪問。2009年にイスラテックを設立。14年間にわたりイスラエルのスタートアップに特化した事業を行う。

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MC:武田 理沙
<株式会社サムライインキュベート Team Leader Enterprise Group>
2014年専門商社に入社後、西南アジア地域向けの海外営業を経験。その後新規事業立ち上げ・投資業務に従事。
2018年よりサムライインキュベートへ参画。大手企業の新規事業立ち上げ支援やイスラエル事業も担当し、イスラエルスタートアップと大手企業の協業支援も行う。

日本の農業にアグリテックが必要な理由

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武田/MC)まずはご登壇者が行なっている事業についてご説明いただきます。

荻野)AgVenture Labは全国のJAグループが集まってできたオープンイノベーション拠点です。アグリテックやフードテック、地方創生など様々な領域への支援を行なっています。
行政との連携やアイデアソンの開催、JAアクセラレータープログラムも行ない、「農業」「食」「暮らし」の中の様々な社会課題の解決を目指しています。

成勢)株式会社レグミンは人と「ロボットが協業して野菜を作る」をコンセプトに、Spraying Robotという自律走行をして、水や肥料、種を撒けるロボットの開発をしています。今は小松菜に特化して開発を行なっています。


武田/MC)日本の農業には以前から課題が多いですが、近年アグリテックが盛り上がっている理由は何でしょうか?

荻野)アグリテックが注目され始めた背景には、自給率の低下と農業の人手不足があると思います。
1965年には73%だった自給率が昨年はわずか37%になるなど、日本の食糧自給率の低さによる危機感が大きいですね。また自給率が低い中で次の農業の担い手不足も大きな問題です。

加藤)そんな後継者不足の問題はテクノロジーで解決できそうですよね。これから農業人口が減る中、1人当たりの収穫量を上げる必要があります。その人手不足をロボットで補い、2/3以上の食糧を国内で生産できたら理想ですね。

農業業界にテクノロジーを浸透していくために必要なこと

武田/MC)農業の課題を解決するためのイノベーションを推進するにあたって、注目しているトレンドやテクノロジーがあれば教えてください。

成勢)ロボティクス領域では画像解析なども取り入れる必要があると思っています。農業には研究開発から生産、流通まで幅広い技術が使われるので、一見関係ない技術でも様々な技術を適合していかなければいけません。

荻野)周辺にあるフードテックやフィンテックなど他の領域と複合させて、新しい価値のあるものが生まれると思います。
テクノロジーも重要な一方で、農家の本当に困っていることに目を向けることも重要だと思っています。一番深刻な問題である人手不足を解決するために、労働者のマッチングなども必要ですね。

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武田/MC)農業というある種レガシーな産業の中でテクノロジーを浸透させるために必要なことや課題はありますか?

荻野)まだ日本の農業に完全に浸透しているテクノロジーは少ないです。そこは農家の人たちの意識を変えることが大事だと思っています。
AgVenture Labのアクセラレータープログラムでも、農家との実証実験やデモなど実際に農業者に技術やアイデアを見せることを推奨しています。農家へのリーチが難しい企業はぜひ全国の農業者とのネットワークなどAgVenture Labの持つアセットを使ってください。

成勢)まずは実際に現場を見ることが重要だと感じました。農家の方々も実際に困っている場合もあるかと思うので、話を聞かせてくれる農家の方も多いのではないでしょうか。

加藤)いかに当事者が使いやすい物を作るかがポイントになっています。多くの人に普及させるためには、スマホひとつで簡単に自動で操作できるくらい利用ハードルを下げることは避けて通れない課題です。

今後の農業業界に対する展望や戦略

武田)様々な課題がある中でどんな課題や分野からアプローチすればいいのでしょうか?

成勢)農業業界は課題が多すぎるので、いちベンチャー企業ではすべてを解決するのは難しいです。いくつかの会社で力を合わせて課題解決をしていくのがベストだと考えています。
新しい事業を行う場合は、東南アジアは地形や地方の過疎化など日本の状況と似ている国が多いので、技術やアイデアを参考にしてもいいと思います。
今後は日本の農業をもっとグローバルに広げていきたいです。実は日本は「ハード」「ソフト」「野菜作りのノウハウ」が揃っているためアグリテックに強い国だと思います。日本の野菜作りをグローバルに広げるために日本中の企業と組んで日本の農業をもっと盛り上げていきたいですね。

加藤)私は日本の農業でもスマホのようなパラダイムシフトがいつか起こると思っています。
例えばAmazonがドローンでの物流網を作ったら、農家から直接野菜を届けるなんて未来もありますよね。だからGoogleやAmazonが行わない土づくりとか種まきなどのアナログな部分を押さえるのは大事です。
大きいIT企業が参入してくる中で当事者である農家が、外の業界を見て状況を知り自分たちから新しい事業創出などアクションを起こしていけたら良いですね。

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荻野)アグリテック のスタートアップがもっと日本中で増えてほしいと思っています。そのために大学の理工学部や農学部に対してアプローチをしています。農業者の求めているものや課題を共有して、ビジネスのタネを発信しています。起業家が自分の持っている技術やアイデアで解決したいという気持ちがあれば、JAや農家と起業家がシナジーを持って新しいビジネスができると思います。

お問い合わせ

サムライインキュベートは、スタートアップ支援と大企業のオープンイノベーション支援を行なっています。
・イスラエルスタートアップへの投資を検討している
・イスラエル企業との協業を行いたい
・サムライの企業内新規事業立ち上げノウハウを知りたい
・イスラエル現地のリアルな情報が欲しい など
イスラエル現地でのイベントや1on1での面談も行なっていますので、ぜひお問い合わせください。

<文・写真=えるも(石橋 萌)>



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